2010.01.19 繊研新聞出稿記事 「働く女性の仕事服」

労働力率

「働く女性の仕事服」というと、一般的には20代前半から30代前半のいわゆるキャリアファッションが想像される。しかし、労働力人口について調べてみると意外な事が分かった。表1は、女性の労働力人口労働力率である。2008年の女性の労働力率(折れ線グラフ)を見てみると、社会人となる20代前半で69.7%と上昇し、20代後半の76.0%が最も高くなる。その後30代では65%前後に減少し、40代前半で再び上昇、40代後半では75.4%と20代後半と比べてもほぼ同様となっている。そして、50代前半で減少に転じ60代に入ると大幅に減少している。これは、20代前半で社会人となって就職し、30代に入ると結婚、出産で離職者が増加、40代・50代でワーキングマザーが増加し、60代では夫の定年や年金受給で生活が安定し、働くことの必要性が低下するためと考えられる。労働力率を1995年と2008年で比較すると、20代前半までは95年と比較して08年には数値が下がっている。この背景には不況の影響で就職できない女性が増加しているためと思われる。20代後半以降では、労働力率はすべての年齢で増加しているが、これも不況の影響による世帯収入の減少や将来不安による貯蓄の増加が背景にある。また、20代後半および30代前半の労働力率の大幅な増加は、晩婚化やDINKSの増加が関係していると考えられる。この結果、シングル・DINKS・ファミリーを含めて、働く女性に対応したファッションビジネスは重要な課題になると考えられる。


労働力人口

表1、棒グラフの労働力人口を見ると意外な事に気付く。それは2008年現在、最も労働力人口が多いのは310万人の55歳から59歳であることである。労働力率は61.6%と高くないが労働力人口が多いのは、ここに戦後の第1次ベビーブームで誕生した団塊の世代が含まれているためである。このグラフからは20代後半から50代前半まで今後も5年齢につき300万人近くの女性が労働力人口として予想ができる。特に、現在30代後半の第2次ベビーブームで誕生した団塊ジュニア世代が、労働力率の高い40代に達することから、この40代の働く女性を対象としたブランド戦略や売場作りの重要性が高まると考えられる。


「雇用形態」

表2は、女性の年齢階級別雇用者割合である。正社員と非正社員を比べると34歳までは正社員の割合が多く、35歳以上では非正社員の割合が多い。ただ、25歳から34歳にかけての正社員と非正社員の割合では、正社員の割合が減少傾向にある。20代後半こそ10%以上の開きがあるものの、20代前半や30代前半では、その差は僅かなものとなっている。
これは、派遣社員の増加やアルバイトの割合が多いことが主な要因であると考えられる。また、正社員の比率が30代後半から50代前半まで、ほぼ25%前後で変化が少ないことにも注目したい。晩婚化やシングル化、いわゆるアラフォーの増加、または、30代・40代DINKSの増加が考えられる。30代前半までと30代後半以降の正社員では、非正社員の比率が逆転しているが、これは30代以降で結婚、出産後のワーキングマザーが増加しているためだと考えられる。企業によってドレスコードはまちまちなので一概には言えないが、正社員の方がドレスコードは厳しいと考えられる。一方で、35歳以上のワーキングマザーに向けた仕事服を考える際にも、このドレスコードは重要な要素になる。特に、パートやアルバイト勤務では、家事や育児と仕事が同じ日に繰り返し行われるので、シーンの汎用性が必然的に求められる。


「働く女性の仕事服」

当社では年4回、都内の通勤スポットで1300枚ほどの写真を撮影して分析を行っている。昨年10月のリサーチで、見た目年齢30代・40代の女性のスタイルを分析した結果、次のようになった。無地のニットやカットソーアイテムを中心としたベーシックなスタイルが27%、エレガンステイストのスタイルが20%、テーラードジャケットテーラードスーツを中心としたシンプルなキャリアスタイルが18%、ほどよくトレンドを取り入れたセレクトショップ風のスタイルが18%、レイヤードのリラックスカジュアルスタイルが13%だった。これは、都心での調査なので全国平均では、よりカジュアルなスタイルが多く発生ししていると考えられる。このような情報を分析することで、働く女性のための仕事服を定義し、提案することが重要である。


 <表1>                       <表2>