2009.08.11 繊研新聞出稿記事 「次世代ヤングの新たな価値観」

「注目のカメレオン世代」
小学校高学年から中学生を中心とした、次世代ヤングをカメレオン世代と呼んでいるが、この次世代ヤングのファッションテイストについて分析を行った結果、現在のヤングテイストと共通性は見られるものの、全く異なったテイスト、価値観の台頭も明確になってきた。市場は常に世代交代を繰り返しており、今後このカメレオン世代への注目度がますます高まることになると考えられるこの世代は90年代後半以降に生まれた世代であり、バブルを知らず、上の世代と比べより編集力が高く独自の価値観でファッション消費を行う。
渋谷の中学生にどこで商品を購入するかを聞くと、109はもとより、ユニクロしまむらが上位に来る。この世代はブランド価値や売場価値よりも商品価値や価格を重視する傾向が強いようだ。現在の20代が中学生だった頃にはこのようなことはなかった。
また、10代後半のクラブカルチャーに影響を受けた生活者への憧れも強く、音楽やアートを含めたマルチミックス型のファッションを楽しもうとする傾向が見られる。



「複数テイストが混合」
近年「ジャパンクール」という言葉がもてはやされ、日本のオタク的サブカルチャーは「異質」という評価から「日本が誇る文化の一つ」として捉えられるようになった。ジャパンクールがワールドトレンドの一つとして定着しつつあり、この世代こそが世界に通用する日本発信トレンドの最初の世代になる可能性さえ感じられる。
オタク的サブカルチャーなどというと、ゴスロリ・パンクなどの非日常性の強いファッションスタイルであり、それらは少数派で大きなマーケットとは成り得ないと考えがちである。しかし、実際にはそれほど単純なものではなく複数のテイストが混ざり合いながら存在している。
弊社では、この複数のテイストをどのように分類し整理するかを考えるため、この世代に支持されている人気ストリートファッション雑誌『KERA』編集部(株式会社インデックス・コミュニケーションズ)のご協力を得てこの雑誌の読者モデルにグループインタビューを行った。
参加者は、PEEP4Uボーカルでカワイイ大使木村優さん、STIGMATAデザイナーのアヤコシラタマさん、DISACODEボーカルのAKIRAさん、アーティストのRe:NOさん、高校生のるなさんの5名(写真参照)。
皆、読者モデルでありながら、アーティストやデザイナーなど若くしてマルチな才能を発揮しており、カメレオン世代にとっての「身近なカリスマ」である。彼女たちへのインタビューによってファッションへの価値観や考え方を知ることができ、また弊社のショップリサーチ情報を組み合わせてカメレオン世代の特徴が顕著に表れるファッションクラスターを15に分類した。
分類された15クラスターは姫ロリ、渋原系、ゴスロリミックス、ageha系、エレクトロパンク、フェアリー系、ガールズパンク、甘ロリ、クラシカルロリータ(バロックゴシック)、ゴスロリ、サイバー系、和ゴス(エスニックゴシック)、ボーイズパンク、ゴスパンク、ゴシック系である。


「マイナーからメジャーへ」
ここからも分かるように従来のゴスロリやパンクといったカテゴリーは、より細分化され、そのプロセスで異なったテイストを取り込んだりミックスしたりすることで、マイナーな存在からメジャーな存在へと変化しつつある。
例えば、渋原系とは渋谷ギャル系と原宿系のいいとこどりファッションのことで、益若つばささん等がファッションリーダーとなり昨今人気が高まっているスタイルのことである。
オゾックやナイスクラップに代表された平成カジュアルブランドブームはセシルマクビー、エゴイストといった109ブームへ、そしてローリーズファーム等を中心とする、ゆるカジブームへとティーンズヤング市場は世代交代を繰り返し、今まさにこのゴスロリ・パンクミックスという新しいスタイルへと受け継がれようとしている。ティーンズヤングを取り込んだ売場、ショップ、ブランドは次の時代に向けてマーケットのイニシアチブを握るといっても過言ではないだろう。
少子化の影響で、今後縮小に向かうと考えられる国内市場、特にヤング市場は顧客人口が減少する中、どう生き残るかが問われることになる。
しかし、このゴスロリ・パンクミックスは先にも述べたように、今までと異なり海外進出の可能性を持ち、我が国のファッションビジネスにおける救世主になる可能性さえ感じられるのである。



人気ストリートファッション雑誌『KERA』編集部(株式会社インデックス・コミュニケーションズ)の読者モデルにグループインタビューした


株式会社プレールは、今後も次世代ヤングにおけるマーケットリサーチを多角的に行います。特にゴスロリに代表されるストリートファッションは、ティーンズの支持する中心的なテイストであるため、引き続き注目して参ります。