愛着を感じるモノ

昨年の8月17日に自身第一回目のブログを担当してからちょうど1年になります。たまです。
最近のスタッフブログはコレクション情報から、様々なイベント、ダイエット宣言?にいたるまで内容が幅広く、同じ社内スタッフながら結構楽しんでいます。

さて、今回は「白洲次郎と正子の世界展〜かくれ里からの贈り物〜」について書いてみたいと思います。

東京都町田市(旧鶴川村)に1943年から白洲夫妻が過ごした「武相荘(ぶあいそう)」と呼ばれる邸宅があるのをご存知でしょうか?
今回は、通常はそこで展示されているおふたりのゆかりの品を中心に、約180点が展示されていました。

白洲次郎氏は、1902年生まれ。誰もが知る事ではあると思うのですが、戦後、吉田茂氏の側近として連合国軍最高司令官総司令部GHQ)との折衝を担当し、GHQ某要人をして「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめた人物です。
1929年に正子さんと結婚。

一方、正子さんは1910年生まれ。戦後は青山二郎氏や小林秀雄氏と親交を結び、骨董に勤しむ。そして自らの「美」を見極める「眼力」を試すべく、銀座に染色工芸のお店「こうげい」を経営。文筆業も盛んで「能面」や「かくれ里」で読売文学賞を受賞。「韋駄天お正」と異名を取るほどの行動派。



展示物の中にはさまざまなエピソードが添えられており、その中におふたりが婚約時代に送り合ったメッセージ付きポートレートというものがありました。次郎氏が正子さんに宛てたメッセージの中で「You are the fountain of inspiration」というフレーズがあり、とても印象深く心に残りました。

後に次郎氏は「夫婦円満の秘訣は一緒にいないこと」というメッセージも残しています。共有する時間は少なくても、活躍するフィールドは違っていても、志が同じであり、それぞれが真摯に自分の役割に向き合う姿勢に共感しあえれば信頼関係は築けるというコメントが添えられていました。

次郎氏の遺言書も展示されており、そこには
一、 葬式無用
一、 戒名不要
と書かれていました。
この潔さは彼が生涯言い続けてきた「プリンシプルのある人生」を貫いた証のひとつと言えるでしょう。

今回の展示のために日本に里帰りしているものがあり、それは、解任されたダグラス・マッカーサー氏に贈った「木で作った椅子」でした。この椅子は次郎氏自身がデザインして武相荘の工房で作られたもので、背の部分に5個の星がくり抜いてあります。一時行方知れずになっていたらしいのですが、現在はマッカーサー記念館に保管されているとの事です。がっしりとした素朴な椅子でした。
正子さんが愛用した越後上布の着物が何点か展示されていたのですが、織りで作られる繊細な柄と色合いはとてもすばらしいもので、ずっと見ていても飽きる事がありません。

お洋服や鞄など身のまわりの品から、家具調度品、収集した骨董まで様々なものが展示されていたのですが、すべてに「愛着」や「暖かみ」が感じられ、所有者のモノに対する愛情が伝わってくる展示会でした。
今度は「武相荘」に足を運んでみたいと思います。