「コミケ」と「ライトオタク」と「ファッション」と「ブルーオーシャン」

こんにちは、安部です。


8月14日〜16日に東京ビッグサイトコミケ76(コミックマーケット)が開催されました。コミケとは、年2回行われる世界最大規模の同人誌即売会であり、来場者数は年々増加し、期間中に50万人が訪れるオタクの最大の祭典です。


「このイベントを見逃すわけにはいかない!!」
私は百貨店バイヤーの友人とともに、コミケをリサーチに行ってきました(萌えグッズを入手するためではなく)。猛烈な暑さでしたが、人・人・人でごった返しており、こんなに人が集まったイベントを東京ビッグサイトで見たことがありませんでした。



ビッグサイト入り口。すごい混んでます。


日陰でグッズを見せ合う人々


彼らは同人誌やグッズを購入して、それらを入れるための可憐な美少女のアニメーションがプリントされた大きな紙製のバッグを持っています。彼らにとってオタクアイテムはこだわりが強いものであるため、収入の中から多くのお金を割きます。例えば、フジテレビジョンのデジタル事業センター室長の塚本氏によると、アイドル育成番組の「アイドリング!!!」のファンはコアで、彼らはライブ会場に来ると数千円〜数万円のグッズを購入するそうで、10枚CDを購入した人はアイドルと握手できますよといったら10枚買うそうです。


近年の国内傾向としては、ジャパンクールの高まりとともに、特に10代・20代の若年層で日本のポップカルチャーの評価が高まってきていることが挙げられます。2008年5月にニューヨークで村上隆のアニメ風フィギュア「ロンサム・カウボーイ」が約16億円で落札され、ヨーロッパでは日本のビジュアル系バンドが人気を集め、日本のアニメやマンガが海外で高く評価されています。これら日本のオタク的サブカルチャーは「異質」という評価から、「日本が誇る文化のひとつ」として捉えられるようになり、一般生活者の間で評価が向上したのです。


このように、10代・20代ではオタク層が広がり、一見すると普通で軽度のオタクである「ライトオタク」が増加しました。メディアクリエイトの「2008オタク産業白書」では、2007年のオタク産業市場規模は1,866億8,000万円で前年比2.5%増加、この理由を「ライトオタクの増加と、それに伴う市場拡大」としています。お笑い芸人やアイドルがオタクであることをカミングアウトし、オタクが身近になってきていることも大きな要因であると考えられます。


このライトオタク、コミケ会場でもよく見られたと思います。見た目年齢が30代以上では明らかにファッションには気を使っていないと考えられる人たちがほとんどですが、10代・20代では一見するとオタクとは分からない人も多く見られるのです。



一見するとオタクとは思えない人々(見た目年齢20代)


「マーケット動向分析での業態開発にてビジネスの成長を求めるか、独自性、オリジナリティを軸に不変なビジネスを継続するか、これからは後者が注目されると思う。前者は同質化が進み低価格化がファッション価値を崩すと思う。」


上記は、先日の弊社プレールのアパレルマーケティングセミナーにご来場された方から頂いた興味深い意見で、私の考えもこのご意見に近いと思います。ファッション業界では、消費の冷え込み、少子化などによって今後も市場規模の低迷が続くと考えられます。既存セグメントによるターゲット選定では、マーケットにおいてライバルとの競争が激しく、価格競争に陥って企業体力を消耗する可能性があります


競争過多のレッドオーシャンから競争の少ないブルーオーシャンへ。ヒットしているブランドや商品を真似るのではなく、ライバルが少なくて利益率が高いマーケットを自ら開拓するという視点が必要となります。オタク(ライトオタク)をターゲットとしたファッションブランドや売場の開発は、その一例になりえるのではないでしょうか。