2008.11.11 繊研新聞出稿記事 「商品開発のための情報収集と商品企画への活用」

サブプライム問題に端を発した不況は、ファッションビジネスにも大きな影響を与えている。マクロミルによると20代から40代を対象としたアンケートで、41.1%の人が「ファッションにかけるお金を節約している」と答えている。このように消費者の買い控え意識は極めて高く、このような状況では価格対応に頼りがちであるが、むしろ商品開発の基本となる「顧客視点」に立ち返った情報収集とその活用が、必要なのではないだろうか。そこで、商品開発のための情報リストを作成し、その関連性や内容を検証する。

トレンドを読む

(1)ゼネラルトレンドの背景にあるメガトレンドを読む
ゼネラルトレンドとはシーズンごとに発表されるトレンド予測の総称である。プルミエール・ビジョンやミラノ・ウニカなどのテキスタイル展とプロモスティル、ペクレールなどのトレンドブックが代表的なものである。重要なことは、ここで提案されるテーマの背景を理解することであり、それは消費者の価値観や心理を反映したものとなっている。最近は、自然との共存や現実社会を強く生きる女性像、現実否定と少女時代への回帰、さまざまな原点回帰などを背景として提案されているものが目立つ。
(2)コレクション情報の活用
コレクションでは多くのブランドがゼネラルトレンドに基づきさまざまなスタイルやアイテムを発表している。SPA化が進んだことによってコレクション終了後に商品の企画、開発を行うブランドが増えたことから、コレクション情報の重要性が高まっている。特に有力ブランドの発表するアイテムやデザイン、素材、カラーの動向が国内市場にもたらす影響は大きい。このコレクション情報を分析することもトレンドへの対応といった点で重要な作業となる。

「顧客視点」の商品開発

(3)マーケットや顧客の動向を調べる
ゼネラルトレンドやコレクション情報に基づき多くのブランドが商品開発を行い、売り場での商品の販売を行うが、トレンドの影響をあまり受けないブランドも多い。そこで、マーケットや生活者からの情報収集を行うことによって、商品開発のためのキーワードを探ることが重要となる。マーケット、顧客情報の収集では4つの手法が考えられる。
第1は、フィールドマーケティングであり、想定される顧客のライフシーンで、実際にどのような衣服の着用が行われているかの実態調査を行う。最も有効な方法としては写真撮影を行い、スタイリング、アイテム、カラー、素材、アクセサリーなど必要な項目別に出現率を分析する方法である。ここではライフシーン特有のアイテムや気温、天候との関係などからトレンド情報では提案されない顧客視点の商品開発キーワードを抽出することが可能となる。
第2は、ショップリサーチであるが、これは売り場に出向いて、商品動向や顧客の様子、アイテム、価格、カラー、素材、サイズなどの情報を収集するものであり、収集した情報をどのように活用するかによって調査方法も異なるため、事前の仮設づくりや調査方法の考案が重要となる。
第3は、グループインタビューである。これは特定の条件(年齢、性別、行動エリアなど)を設定し共通する数人の消費者に対しインタビュー形式で情報を収集するものである。インタビュー形式なので、奥行きのある情報収集が可能である。
第4は、アンケート調査であるが、最近はインターネットを活用したアンケートが増加している。インターネットの場合、低コストで多くの情報を収集することができる。また、特定の店舗で、その顧客に対して行うアンケートも有効性が高い。このような情報収集に加えて、年齢と世代の関係、世代別の消費特性、ライフステージ分析とステージによるライフシーンの変化、ライフスタイル分析を行い顧客プロファイルを作成することが重要である。
(4)日本のマーケット、日本人の価値観から考えるメガトレンド
ゼネラルトレンドやコレクション情報は、欧米、特にヨーロッパから配信されている。したがって、基準となる価値観はヨーロッパのものであり日本市場を考慮したものではない。日本人の価値観と共通するテーマもあれば、ズレを感じるテーマもる。そのため日本人の価値観や社会環境、生活環境を分析したうえでトレンドを読むことが必要となる。このように多様な情報を収集、分析し活用することによって顧客の求める実用性とファッション性に優れた商品の企画、開発が可能となる。